12月29日、東証1部市場が1989年にバブル相場での史上最高値3万8957円をつけてからちょうど30年が経つ。
バブル崩壊後、日本経済は不良債権処理の問題やデフレなどにより低迷を続けてきた。第二次安倍晋三内閣の経済対策「アベノミクス」で
株価は最高値の半値程度まで戻したが、景気回復の実感からはほど遠い。海外投資家からも徐々に見捨てられ始めている──。
1989年12月29日の史上最高値の直後、年明けの1990年1月から日経平均株価は急落を始めた。同年末には終値2万3848円まで下がり、
その後も回復することなく、リーマン・ショック後の2009年3月にはバブル後最安値の7056円を付けた。
2012年12月に成立した第二次安倍政権が「異次元金融緩和」を進め、あふれた投資マネーが日本株にも流入した。その結果、株価は上昇に転じ、
19年現在では2万3000円台と最高値から6割程度の水準まで値を戻している。
これだけ見ると、アベノミクスは少なくとも株価全体を持ち上げた救世主のようにみえる。ただ、証券業界関係者には冷静に見る向きが増えている。
国内証券ストラテジストはこう話す。
「確かに株価上昇自体は歓迎すべきことですが、問題はその中身です。日銀が上場投資信託(ETF)を大量購入し始めるという世界の先進国で
例を見ない金融施策に踏み切ったせいで、健全な株価の形成機能が損なわれ、株価が下落すべき時に下落しなくなった。ETF買いは本来、
一定以上株価が下がると実施されるもので、個人投資家の資金が市場に流入するのを妨げている。
上昇のけん引役となった海外投資家にしても、アベノミクスが始まった12年から15年までは現物株を一貫して買い越していたのが、16年からは
売り越しに転じる場面も出始めました。初期は年金など長期運用資金でしたが、それが徐々にヘッジファンドなどの短期の投機筋がメインに
切り替わっていった。アベノミクスの賞味期限がほんの4年で来てしまったという証拠でしょう」
別のある中堅証券ストラテジストもこう話す。
「日銀がETFを通じて業績に関係なく幅広く日本株に買いを入れ続ける過程で、いつしか東証1部上場企業の大株主になった、というパターンも
少なくない。
日銀は2016年から年間6兆円のペースでETFを買っており、19年3月末時点の時価ベースでの保有額は約29兆円と、東証1部市場の時価総額の
約5%を占める規模にまでふくれあがっています。しかも、それが今後も増えていく。
このような状態では、例えば日産株を日銀が保有していたとして、元会長のゴーン氏の騒動などの際に、日銀が株主総会でどういう議決権を
行使したのか開示されない。
(続く)
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