こういうことの積み重ねが、海外からの『日本の株式市場は中央銀行に統制されている』とか『一般株主に株が回らなくなる』という批判に 
 つながっている。海外投資家からは『日本はいっそ、「株価安定法」でも作ってしまえばいい』と揶揄されています」   
 日銀のETF買いで株価が十分に下落しなくなったことの弊害として、トレーダーなど証券業界の海外への人材流出が進んでいる。銀行系証券の 
 ベテラントレーダーが打ち明ける。   
 「日本株はボラティリティ(価格の変動率)が低く実績を上げにくいという理由で、シンガポールや香港に30〜40代の働き盛りの若手が集まる 
 傾向が、年々強まっています。それらの市場で働くのは確かに厳しいですが、年収も2000万、3000万が当たり前の世界ですし、何よりブランドに 
 なりますからね。そこで3年ほど働いて、日本に戻るか海外に移住するか選ぶというわけです。   
 日本の国際的地位の低下によって、東京の外資系金融の日本株式担当者も数が減っている上、『日本担当』という肩書きではなく『アジア担当』 
 という風に、ワン・オブ・ゼムの位置づけになってしまいました。   
 今の日本市場は事実上、米国市場の写し相場で、日本単独の要因で株価が動くことはほとんどありません。今のアジア投資の中心は言うまでもなく 
 中国ですから、仕方のないことかもしれませんが、かつての勢いは見る影もない」   
 さらに、別の大手証券のストラテジストは海外投資家の日本に対する理解が著しく低下している現状を危惧している。   
 「かつては東京在住20年以上、日本についての知識がそれこそ日本人よりもあるような外国人トレーダーが大勢いたものですが、今はせいぜい 
 2〜3年の駐在がほとんど。   
 そのため、日本人のストラテジストが面談すると、まず聞かれるのが『安倍政権の基本的な構造』。『安倍政権はなぜ安定しているの?』とか 
 『自民党の二階俊博幹事長って、何をしている人なの?』といったことです。一昔前は彼ら独自の人脈も興味関心もあったのでしょうが、 
 日本自体が残念ながら、そこまで深く理解すべき対象だとは思われなくなっているようです」   
 来年はいよいよ日本経済の節目となる東京五輪を迎える。   
 かつては「東京五輪が終われば日本経済も終わる」との悲観論も説かれたが、証券業界関係者は楽観的な向きが多い。半導体の国内外の 
 在庫調整が一巡し、次世代通信規格「5G」向けの需要が見込まれる上、何と言っても、消費増税対策で実施される26兆円規模の大型経済対策が 
 あるためだ。ネット証券ストラテジストはこう見通しを話す。   
 (続く)
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