—— 安倍総理は実質賃金より総雇用者所得の増加を重視すべきだと主張しています。
明石:確かに総雇用者所得は増えていますが、それは雇用者が増えたのだから当然です。問題は雇用者の内訳です(図2)。アベノミクス
擁護者たちは絶対に触れませんが、職種別の雇用者数を見ると、医療・福祉が6年間で125万人も増えています。その理由は高齢者が
増加していることであり、アベノミクスとは無関係です。
https://hbol.jp/wp-content/uploads/2019/11/66c... 雇用が増えている理由をもう一つあげると、多くの企業がフランチャイズで多店舗展開していることが関係していると思います。
フランチャイズとは、フランチャイズに加盟する人や法人が、フランチャイズ本部から店の名前やサービス、商品を使う権利をもらい、
その対価をフランチャイズ本部に支払う仕組みです。権利を与える側はフランチャイザー、権利を付与される側はフランチャイジーと
呼ばれます。コンビニがその典型です。
フランチャイズの総店舗数および業種ごとの店舗数の推移を見ると、アベノミクス前からフランチャイズ店は増え続けており、特に
コンビニの伸びは小売業全体の伸びを上回っています(図3)。そして、日本はフランチャイズに関して何の法律もないので、
フランチャイザーがフランチャイジーを搾取し放題になっています。だから店舗数を増やすことができ、それに伴って雇用者も
増えるのです。
https://hbol.jp/wp-content/uploads/2019/11/fc7... このことは12月に出版予定の『人間使い捨て国家』(KADOKAWA)に詳しく書きましたが、たとえばコンビニのオーナーは実態は
労働者なのに個人事業主として扱われているため、残業代も支払われず、人件費が極端に圧縮されています。こうした脱法行為が平気で
まかり通っているのです。
—— 安倍総理はアベノミクスによって有効求人倍率が上昇し、失業率が低下したと述べています。
明石:有効求人倍率の上昇も失業率の低下も、ともにアベノミクス前から始まっており、アベノミクスとは関係ありません(図4)。
アベノミクス以降もずっと改善傾向が続いているのは、金融危機が発生していないからです。
https://hbol.jp/wp-content/uploads/2019/11/c0d... 数字が悪化した時期を見ると、1991年のバブル崩壊以降、雇用はどんどん悪化していき、1997年末に発生した金融危機に
よってさらに悪化します。2003年あたりから徐々に良くなりますが、2008年のリーマンショックで再び悪化します。つまり、
アベノミクス以降は金融危機が発生していないから雇用の改善が継続したにすぎないのです。
そのため、再び金融危機が起これば、雇用はまた悪化するでしょう。しかし、失業率の急激な上昇はある程度抑え込まれるかも
しれません。というのも、日本ではとにかく高齢者が増えており、医療・福祉分野の人材不足が深刻になっているからです。失業者は
そこに吸収される可能性があります。
(続く)
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