アニメーションやゲームコンテンツを制作する日本の有力メーカーが、中国の大手IT企業の完全子会社となることが発表 
 された。現在、世界を席巻する「ジャパニーズ・アニメ」には欧米だけでなく、中国や中東マネーが大量に流れ込んでいる 
 という。その「マネーウォーズ」の実相と行く末をリポートした。   
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  7月に発表されたあるニュースが、業界を驚かせた。「ノベルゲーム」分野で多くのヒット作をリリースしてきた老舗ゲ 
 ーム会社「ビジュアルアーツ」が、中国の大手IT・ゲーム企業のテンセント・ホールディングスに創業者一族の持つ全株 
 式を譲渡すると発表したのだ。   
  ビジュアルアーツはバンダイナムコやスクウェア・エニックス、カプコンといったゲームメーカーに比べると、事業規 
 模は必ずしも大きくない。しかし自社ブランド「Key」には熱烈なファンも多く、またドラマ性の豊かな作品群を世に送り 
 出し、そのほとんどがアニメ化されている稀有な会社だ。実際、京都アニメーションによって制作された「AIR」や「CLAN 
 NAD」などはいまも「傑作アニメ」との評価を得ている。   
  変化の激しいアニメやゲーム業界では昨今、この手のM&Aは珍しくないが、今回、異色だったのはビジュアルアーツが 
 業績不振から中国企業に身売りしたわけではない点だ。むしろ人気作品を多く抱える同社の経営は安定しており、直近の決 
 算では過去最高の利益を上げるほど「絶好調」だった。   
  ビジュアルアーツの馬場隆博社長は、両社のカルチャーや事業継承の観点からテンセントが最良だったと説明する。しか 
 しアニメ業界の有力メーカーが、中国企業の100%傘下に入ったことの意味は小さくない。   
 「中国資本」の出資攻勢 
  テンセント側の狙いは何か。ビジュアルアーツを子会社化したことで、同社の持つ作品群を中国市場で展開可能となった 
 点はメリットだ。しかしテンセントの真の目的は、ビジュアルアーツという優良企業そのものと、同社が持つIP(アニメや 
 漫画、キャラクターなどの知的財産権)という“宝の山”だったと考えられる。それにより、日本や世界を舞台にさらなる 
 収益を生むことが期待できるのだ。   
  日本のアニメやゲームコンテンツに熱い視線を送る中国企業はテンセントだけではない。テンセントのライバルと目され 
 る中国のIT企業「ネットイース」もその一つ。今春、東京ビッグサイトで開催された国内最大級のアニメイベント 
 「AnimeJapan 2023」に、見慣れないブランドの巨大ブースが出展されて話題を集めた。   
  ブースには新アニメプロジェクト「ANICI」の文字が躍ったが、このANICIを運営する会社NICIは、ネットイースの 
 関連会社である。ANICIは「長期的な視点で日本アニメを創出する」ことを謳うが、要はネットイースが出資者として企画 
 段階から日本のアニメに関わる姿勢を示したものだ。   
  近年、中国企業による日本のエンターテイメント業界への出資が相次ぐが、多くは一般に公表されることはないため、ビ 
 ジュアルアーツやANICIの例は“氷山の一角”に過ぎない。続く  
https://news.yahoo.co.jp/articles/36526dc21c65e0ecfad40...
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