政府と日銀それぞれが先日発表したデータを見る限り、これまでの安倍政権の景気回復策は失敗に終わったと言っても過言ではないようです。 
 ジャーナリストの高野孟さんはメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で今回、その失敗の原因を具体的な数字を挙げながら分析・解説するとともに、 
 2020年にかけ日本の景気が下降局面に転がり込む公算が大きくなったという見方を示しています。   
 内閣府が12月10日に発表した18年度国民経済計算の年次推計で、同年度の実質GDPの対前年度比伸び率は0.3%、名目成長率は0.1%、すなわち 
 ほぼゼロ成長だったことが明らかになった。19年度も、消費増税の影響もあり、前年度と同じかそれ以下の数値となることはほぼ確実である。   
 それに続き12月13日に発表された日銀短観では、企業の目先の景況感を示す指数は4四半期連続悪化で、「2013年3月調査以来、6年9カ月ぶりの 
 低水準」だった。ということは、まさに6年9カ月前に発動されたアベノミクスは、全くの無駄に終わったということであり、その結果、来年に 
 かけて景気が下降局面に転がり込む公算が大きくなった。   
 ところが安倍政権は、この事態にきちんと向き合おうとはしていない。何事によらず都合の悪いことはコソコソと隠して知らんぷりを決め込もうと 
 するのがこの政権の常套手段だから、当たり前と言えばそうなのだが、そこで国会にも国民にも何も説明せずに企んでいるのが「金融でだめなら 
 財政緩和」(12月11日付日経「大機小機」欄)という危険なシフト・チェンジである。   
 日銀短観が出た同じ日の臨時閣議は、経済対策を中心に4兆4,722億円を追加支出する今年度一般会計の補正予算案を決定すると共に、法人税 
 などの落ち込みで税収見込みが狂った分を、赤字国債2兆2,297億円と建設国債2兆1,917億円を追加発行して穴埋めすることに踏み切った。 
 補正後の一般会計予算は104兆6,517億円、国債発行額は37兆0,819億円に達し、「税収が減る中で大盤振る舞いを打ち出すという、いびつな 
 構図」(14日付朝日)が浮き彫りになった。が、その奥に透けて見えるのは、「異次元金融緩和」の総括も後始末もしないまま 
 「異次元財政緩和」に飛び移ろうとする安倍晋三首相の苦し紛れのアクロバットぶりである。   
 2020年、安倍首相がまず全力で取り組まなければならないのは、景気の下落に歯止めをかけアベノミクスの破綻を隠し通すことであるけれども、 
 その成算はほとんどない。   
 旧第一勧銀のトップ・エコノミストだった山家悠紀夫は『日本経済30年史/バブルからアベノミクスまで』(岩波新書、19年10月刊)で 
 こう言っている。   
 日銀がマネタリーベースを思い切り増やせば「増えた手元資金をもとに、市中金融機関は貸出を行うだろうから、民間の経済主体(企業や個人)が 
 保有する資金量(マネーサプライ)も増加するだろう、その増加した資金が消費や投資に向かい民間の経済活動が活発化するだろう、物価も 
 上がるだろう、というのが日銀の狙いである」。   
 (続く)
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