「日本でも口座維持手数料をとるようになります。銀行に勤めていたときに、行内で検討していました。米国の銀行では何十年も前から 
 とっている。ほかの銀行がどうするのか横目で見ていて、どこかが始めると一斉に追随すると思います」   
  こう話すのは最近までメガバンクに勤め、メーカーに転職した男性だ。銀行は稼ぐ力が弱まっていて、口座維持のコストを利用者に 
 押しつけようとしている。お金を預けていると、知らないうちに維持費をとられ、残高がゼロになるかもしれないのだ。   
  地方銀行出身で、いまは静岡県富士市の産業支援センター「f−Biz」の責任者として中小企業支援に取り組む小出宗昭さんも、こう話す。   
 「口座維持手数料は間違いなく導入されます。金融機関は積極的な営業で預金口座を増やしてきましたが、優良な貸付先はなくなり、 
 従来のビジネスモデルに限界が見えてきました。口座維持には、マネーロンダリング(資金洗浄)のチェックなど、昔に比べコストが 
 かかっています。手数料は、もはや、いつ導入するかの問題でしょう」   
  金融機関の経営に詳しいコンサルティング会社マリブジャパンの高橋克英代表も、導入は避けられないという。『銀行ゼロ時代』 
 (朝日新書)の著書があり、銀行経営は厳しさを増していると指摘する。   
 「銀行の収益力は落ちています。どこも早く導入したいでしょうが、顧客の反発が予想されます。三菱UFJや三井住友、みずほなど、 
 まずメインプレーヤーが始めるのではないでしょうか」   
  こうした見方を裏付けるように、全国銀行協会会長の高島誠・三井住友銀行頭取は9月の会見で、口座維持手数料についてこう述べた。   
 「口座を維持・管理するために一定のコストが発生しています。昨今、そのコストが高まっていることも事実です。一般論として、 
 付加価値の高いサービスを提供し、お客さまのご理解を得たうえで必要な手数料をいただいていくことが、引き続き基本的な考え方でしょう」   
  金融機関の余裕がない背景には、政府が主導する異例の政策がある。「アベノミクス」の一環として日本銀行は、2016年からマイナス 
 金利政策を実施している。超低金利になり、預金してももらえる金利はほぼゼロ。企業などへの貸出金利も大幅に下がり、銀行は利ざやで 
 稼げなくなっている。   
  大手行や地方銀行など118行が加盟する全国銀行協会によると、18年度の全国銀行の決算(単体ベース)は、純利益が前年度に比べ 
 27.1%減の2兆2131億円だった。   
 (続く)
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