ただし、国際的なルールで、輸出した商品の価格に消費税は転嫁できないことになっています。 
   税務署に申請するとその転嫁できない分が還付金として戻ってくるわけですが、特にトヨタのような大手の輸出企業だと、数千億円単位の莫大な 
 金額になる。   
 輸出企業、特に大手が恩恵を受けられる仕組みになっていることを考えれば、実質的な『輸出補助金』と言っても過言ではありません」   
 具体的に整理すると、次の通りになる。50万円の商品を下請けから仕入れたとき、メーカーは消費税率10%を上乗せし、55万円を下請けに支払う。 
 下請けはこの売り上げから5万円を税務署に納める。   
 メーカーはそれを加工し、税込み110万円の商品を作ったとする。国内では販売に際し、消費税10万円を消費者から受け取る。   
 10万円から仕入れの際、下請けに払った5万円を引き、残る5万円をメーカーが税務署に納める。これを年間でまとめて計算して支払う。   
 一方、海外に輸出する場合は輸出免税により価格は税抜きの100万円となるため、仕入れの際に支払った5万円が相殺できない。これを国庫から 
 還付金として補填する、というのが、輸出免税制度の仕組みだ。   
 税務署に質せば、「本来支払う必要がなかった税額分を企業に返しているだけ」と答えるだろう。たしかに輸出を行う企業であれば、大手に限らず 
 還付自体は受けられる。だが、輸出金額が大きいほど、企業が得をする可能性が高い。   
 というのも、この消費税還付金には、年率1.6%の利息に相当する「還付加算金」が上乗せされて戻ってくるからだ。'18年度分で3683億円の還付を 
 受けるトヨタを例に取れば、単純計算で約59億円が利息として入ってくることになる。   
 同社の'18年度の純利益は約1.9兆円。これだけ稼いでいて、なおも利息を苦労なく手にするわけだ。   
 輸出免税制度は、企業間格差を広げる一因にもなっている。大企業が優遇される一方で、その下請け企業は増税の影響をモロに受けるからだ。   
 消費増税分を価格に転嫁し、値上げしようとすれば、大企業から「消費税増税分は値下げしろ」と、かえって値下げ圧力を受けてしまう。   
 ほとんどの下請けは自ら商品を輸出するわけではないので、還付金は受けられない。それでも法人税などはきっちりと税務署が取っていく。   
 本来であれば消費税還付金は下請けにも還元されるべきものだが、実際には税金を商品に転嫁しづらい圧力がある。   
 立正大学法学部客員教授で税理士の浦野広明氏はこう言う。   
 (続く)
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