消費税率が10%に引き上げられて1カ月が経ったが、安倍首相が「十二分な対策を打った」と豪語する増税対策の失敗が次々とあきらかに 
 なっている。   
  最大の失敗は、プレミアム付き商品券だ。このプレミアム付き商品券は低所得者や子育て世帯を対象に最大2万5000円分の商品券を2万円で 
 購入できるというものだが、共同通信が自治体に対しておこなった調査によると、低所得者のうち商品券の購入を自治体に申請した人は、 
 なんとわずか3割程度にとどまっていることがわかったのだ。   
  ある意味、当然の数字だろう。そもそも、子育て世帯には自宅に購入引き換え券が届く一方、低所得者は事前に市区町村に申請しなければ 
 ならず手続きが面倒なシステムになっている上、最大2万円も出して商品券を購入すること自体が難しい人も多いと増税前から批判を浴びていた。   
  だが、そうした批判を受け止めることなく実行した結果、ほとんど増税対策として機能していないことがわかった。つまり、安倍首相は 
 「低所得者への配慮」だと強調してきたが、その「配慮」とやらはほとんど行き届いていないのである。   
  だいたい、たったの5000円で「配慮」などと言い張ること自体がどうかしているのだ。日本経済新聞のデータによると、消費税8%の場合、 
 1世帯当たりの年間消費税負担額は、年収200万円以上300万円未満の世帯で13.1万円。これが消費税10%に引き上げられれば、予測で 
 17万円に跳ね上がる。これのどこが「低所得者」対策と言えるだろうか。   
  しかし、増税対策の失敗はこれだけにとどまらない。もうひとつの失敗は、キャッシュレス決済時のポイント還元制度だ。   
  今月1日、経産省はポイント還元の登録店舗数がスタート時の約50万店から約64万店に増えたと発表、メディアも「好調な滑り出し」 
 などと報じたが、一方、このペースでいくとポイント還元のために用意した今年度予算の1786億円を上回り、予算が枯渇する可能性が 
 出てきた。そのため、麻生太郎財務相は「足りなくなったら、足りなくなったときの話で、必要があれば、予算の執行状況などをよく 
 分析したい」とし、追加予算を投入する可能性を示唆したのだ。   
  ようするに、「社会保障の充実」を謳って増税したのに、社会保障ではなく、さらにポイント還元のために税金を投入する可能性が 
 出てきたのである。   
  しかも、このポイント還元は、高い買い物をすればそれだけポイントも多くなるため、軽減税率と同様に富裕層や高所得者層ほど得をし、 
 クレジットカードをつくれない低所得者やクレジットカードを持たない人の割合が高い高齢者は恩恵が受けられない不公平な制度だ。実際、 
 民間企業のCriteoが先月29日に発表した調査結果によると、ポイント還元の利用状況は年収1000万円以上が56%にものぼった一方、 
 年収400万円未満は37%にとどまり、〈年収が低いほど利用が少ない傾向がみられた〉という(通販通信10月30日付)。   
 (続く)
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