竹中平蔵 経済学者/東洋大学国際学部教授 
    意外と意識している人はまだ多くないのですが、私たちはこれからすごく長寿の時代を生きることになります。たとえば100歳まで 
 生きるとすると、90歳くらいまでは働くことになるでしょう。でも、約70年間1つの会社で働くなんてありえないですから、どこかで 
 転職をすることになる。そうしたときに、専門性が身に付いていない人は生き残れないわけですね。   
  MITのメディアラボの標語に、“Compasses over Maps”という言葉があります。昔だったら、偏差値の高い大学を出て、大企業に 
 就職して、そこで管理職になればそこそこ生きていけた。それが人生の「地図」だったわけですね。でも今の時代、地図はどんどん 
 変わっていく。昨日までそこにあった橋が急になくなったりするわけですよ。コンパス、つまり進むべき方向を見定めて前に進む力が 
 必要になってくる。それが専門性です。   
  しかし、日本はみんなジェネラリストになるための教育を受けるので、ものすごく専門家が少ない社会です。ただ、ジェネラリストにも 
 二通りのパターンがある。何でもできるジェネラリストと、何にもできないジェネラリストです。   
  変化の激しいこれからの時代、前者が生き残り後者は淘汰されていくのは言うまでもありません。では、何でもできるジェネラリストに 
 なる、つまり、専門性を身に付けるにはどうすればいいか。私はこの「竹中式 イノベーション仕事術」という本の中で、次のようなことを 
 書いています。   
  “いちばん重要なのはまず「自分をプロデュースする」ことではないでしょうか。   
  それはつまり、自分自身が何をしたいかをまず明確にすることです。それをあえて「プロデュース力」という言葉に言い換えたいと思います。 
 このようなプロデュース力を持てば、あなたの人生にあなた自身がもっと関心と目的意識を持ち、真剣に取り組めるのではないですか”   
  その具体的な方法として、私は自分の10年後、20年後の履歴書を書くことを勧めています。具体的に未来の夢を形にし、実現するには今 
 何をすべきかを逆算するのです。   
  この逆算方式は人生を充実させる重要なツールです。私も大学を卒業して日本開発銀行に就職した頃、「自分の本を出す」という夢を 
 逆算方式で叶えたことがあります。   
  一冊の本を出すには、400字詰めの原稿用紙で300枚ほど書けば達成します。そうすると、1日3枚書けば100日で本が書けると逆算した。 
 それからは、毎日家に帰ってから1日3枚とにかく書き、当初の予定通り100日で自著を完成させました。   
  昔は上司に付き合って意味のない残業をしたり、付き合いで飲みに行って上司の自慢話を聞かされたりする時代だった。でも、今は働き方 
 改革でそういったことから解放され、恵まれた環境になりつつありますね。ただ逆に言うと、会社が今までのように100%面倒見てくれないから、 
 自分で専門性を身に付けていかないとサバイブできないという苦しい時代でもある。だから、早いうちから自分の「コンパス」を持つことが 
 必須となってくるのです。    
https://president.jp/articles/-/3018...
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