「日本はAIにおける開発分野で、完全に後進国になってしまった。このまま目覚めないと、やばいことになる」——。 
   ソフトバンクG(グループ)主催のイベント「ソフトバンクワールド2019」(7月18日)で、基調講演に登壇した孫正義氏は、 
 こう言って嘆いてみせた。   
 AIや自動運転など最新の技術がテーマとなったこの講演。「日本企業の戦略は焼き直しばかり」「衰退産業にしがみついている」と 
 厳しい発言が増えている近ごろの孫氏だが、この日も冒頭のように、日本経済の現状を辛辣な言葉で一刀両断。テクノロジーについては 
 「日本は後進国」と言い切った。   
 ソフトバンクGは'16年には英半導体大手アーム社を3.3兆円で買収、'18年には主幹事業であった携帯キャリア事業を子会社化した。 
 こうした流れの中でいま、孫氏がもっとも注力しているのは、SVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)なる投資事業だ。   
 単なる通信サービス企業から、日本最大規模の10兆円を運用する投資ファンドへと変貌を遂げようとしている。   
 孫氏は同講演で次のようにも語っている。   
 「『孫さんは日本の会社にちっとも投資していない。何か思いがあるのか』とよく聞かれる。悲しいことに、日本には世界でナンバー1と 
 いえるユニコーン(創業10年以内、評価額10億ドル以上の未上場企業)が少ないのが現実で、投資したくても投資できない」   
 もはや日本には、投資する価値がある企業がないとすら言う孫氏。カリスマの言葉に同調し、にわかに国内産業の未来を憂い始める向きも 
 あるようだが、それ以前に、私たちが知っておくべき事実がある。   
 ソフトバンクは国内の投資云々以前に、もっとも大切なおカネを日本に払っていない。それは、莫大な利益に対する「法人税」である。   
 2018年3月期の決算で、ソフトバンクGの売上高は約9兆1587億円の過去最高額、純利益は1兆390億円を計上していた。ところが、 
 これほど儲けている企業が、日本の国税に納めた法人税は、なんと「ゼロ」。実質的に1円も払っていないというのだ。   
 単純計算はできないが、本来であれば1000億円単位の法人税を国に納めていてもおかしくないはずのソフトバンク。孫氏は合法的な 
 「租税回避」を計画し、国税の手を逃れたのだ。   
 「ポイントになるのは、'16年に買収したアーム社の株式です。ソフトバンクGはこの株式の一部を、グループ内のSVFに移管しました。   
 この移管で会社側に損失があるわけではないのですが、税務上の処理ではアーム社株の時価評価額が取得価格を1.4兆円下回り、同額の 
 『欠損金』が生じたという計算がなされた。   
 その結果、ソフトバンクGの'18年3月期決算は税務上、1兆円超の黒字が消えたうえ、赤字扱いになったのです」(税理士の奥村眞吾氏)   
 (続く)
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