毎月勤労統計の不正調査発覚を機に、国会で、実質賃金を巡る議論が続いている。  
   野党は、「実質賃金の伸びはマイナスだから、アベノミクスは失敗した」としている。    
 それに対して、安倍晋三首相は、「総雇用者所得が増えているから、アベノミクスは効果を上げている」と主張している。    
 総雇用者所得が2018年に急に増えたのは事実だ。しかし、それは女性の非正規就業者数が増えたからだ。それによって平均賃金が 
 押し下げられた。    
 だから、総雇用者所得の増加は、望ましい結果をもたらさなかったことになる。    
 なおこれは、配偶者特別控除が拡大されたことの影響と考えられる。したがって、1回限りの効果だ』、国会論戦を詳しくみている訳では 
 ないが、安倍の手前勝手な言い分に対して、野党は何故、正面切った反論をしないのだろう。不勉強のためとは思いたくないが・・・。   
 安倍首相が言っている「総雇用者所得」とは、「毎月勤労統計調査」の1人当たり名目賃金(現金給与総額)に、総務省「労働力調査」の 
 非農林業雇用者数を乗じたものだ・・・この指標は、政府が毎月の景気情勢を分析している月例経済報告で用いられている。    
 この推移を示すと、図表1、図表2に示すとおりだ。     
 図のように総雇用者所得が、2018年に急に増えたのは、事実だ。名目で増えただけでなく、実質でも増えた。    
 だだし、言うまでもないことだが、賃金と、それに雇用者数を乗じた総雇用者所得とは別の指標だ。    
 野党は「実質賃金の下落が問題だ」と言っているのだから、それに対して「雇用者総所得を見れば増えている」と言っても、答えたことには 
 ならない。議論はすれ違っている。    
 これは、「プラトンはさておき、ソクラテスは」と言われる論法である(試験で「プラトンについて述べよ」という問題が出たが、 
 ソクラテスのことしか勉強しなかった学生がこう言ってソクラテスについて述べたという話)。    
 問題は、18年に起きた現象をどのように解釈するかだ。    
 以下で見るように、問題の本質は、女性や高齢者が増えているために賃金が下がることなのである。    
 これは、後で見るように困窮度の高まりと解釈できる。したがって、望ましいことではない。事実、18年の実質消費はほとんど増えていない』、 
 首相が質問をそらして答えているのであれば、野党は直ちに反論すべきだろう。   
 総雇用者所得が増加している主たる原因は、就業者数が増加していることである。    
 この状況を労働力調査で見ると、以下のとおりだ。    
 まず、図表3に示すとおり、就業者数の対前年伸び率が2018年に急に上昇した。    
 また図表4に示すとおり、65歳以上はもともと伸び率が高かった。    
 18年に大きな変化が見られたのは、図表5に示す女性だ。それまで対前年比1.5〜2%の増加だったのが、2%を超える高い伸びになった。    
 (続く)
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