安倍政権がコロナ不況への緊急経済対策として打ち出した「持続化給付金」。約2兆3000億円の予算がついたこの事業を経産省から
委託された一般社団法人が、実体のない“幽霊法人”だったことが「週刊文春」の取材で分かった。社団法人の代表理事が「週刊文春」の
取材に対し、「何も活動がない」と認めた。
持続化給付金事業は、昨年より収入が減った中小企業等の法人に最大200万円、フリーランスを含む個人事業者に最大100万円を上限に
現金を支給する制度だが、入金が遅れるなどトラブルが相次いでいる。
担当する中小企業庁のホームページによれば、同事業を受注したのは「一般社団法人サービスデザイン推進協議会(以下、「サービス
協議会」)」で、アベノマスクの予算を300億円も上回る769億円で契約している。
登記簿に記載されている所在地は、東京・築地にある9階建てのオフィスビルだ。記者が実際に訪ねてみると、確かにエントランスの
案内板には〈2F 一般社団法人サービスデザイン推進協議会 ITプロジェクトルーム〉の文字が。ところが、2階に上がると、膨大な
業務に追われているはずのサービス協議会のドアは固く閉じられ、インターフォンを何度押しても反応はなかった。
「週刊文春」の取材に対し、「サービス協議会」の代表理事である笠原英一氏(アジア太平洋マーケティング研究所所長)が明かす。
「私は電通の友人に頼まれて、インバウンドの研究をやろうと思って入ったんだけど、何にも活動がないから。いつも会議は電通さんで
やっていました。電通さんに聞いた方が」
代理店関係者が言う。
「『サービス協議会』は、経産省肝いりの『おもてなし規格認証』という制度を運営する団体として2016年5月16日に設立された。
主導したのは当時電通社員だったA氏で、電通が国の業務を間接的に請け負うための隠れ蓑として設立された団体と言われています」
「サービス協議会」設立時の代表理事を務めた、ユニバーサルデザイン総合研究所所長の赤池学氏が言う。
「ご存じのように、『おもてなし規格認証』のために作られた組織です。うちの研究所もいろんなビジネスのネットワークがあったので、
経産省の方から立ち上げの直前に代表理事を受けてもらえないかという話があって、それで受けたんですけど」
国の補助金事業を受注した一民間団体の代表理事選定に、発注者である経産省が関与していたとすれば問題ではないか。
「経産省が外郭団体の設立に関与することは天下りや不祥事の温床になります。また、今回のケースでは『サービス協議会』はトンネル会社
みたいなものであり、実際に事業を委託された企業に対し、補助金の公正な使用を求める補助金適正化法の直接的なコントロールが
及ばないのは問題でしょう」(入札制度に詳しい同志社大学政策学部の真山達志教授)
(続く)
返信する