4月7日、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づき、東京を始めとする7都府県を対象に5月6日までを期限とする
緊急事態宣言が発令された。
欧米のメデイアは一様に「感染拡大を抑制するには不十分な措置である」と厳しい評価を下しているが、緊急事態宣言を発令したことの
成否は、「どこまで人の動きを抑えられる」にかかっている。
緊急事態宣言発令により、地方自治体は外出自粛要請と休業要請が行えるようになる。このうち休業要請については、罰則はないが
要請に従わない企業名を公表することにより実質的な強制力を発揮できることから、「人と人の接触を8割減らす」という目標達成の
切り札である。
だがその休業要請について、休業補償の是非を巡って国と地方自治体が対立している。
財政に比較的余裕がある東京都を除く6つの府県知事は「休業要請と休業補償はセットである」との態度を明確にし、これが認められ
なければ休業要請を行わない構えであるのに対し、国は「休業補償は現実的ではない」として応じる姿勢を示していない。
自民党の有力若手衆議院議員によれば、政務調査会の場で「休業補償を実施すべきだ」と主張したところ、「働かざるもの食うべからず」
という自己責任論を振りかざす議員が圧倒的多数を占め、賛同者はほとんどいなかったという。
国は「欧米でも休業補償制度は存在しない」と説明しているが、英国やフランス、ドイツでは実質的に休業補償が行われていると言っても
過言ではないだろう。
欧州と日本の間の休業補償についての温度差はどこにあるのだろうか。筆者は社会福祉に関する歴史的変遷の違いがその背景にあると
考えている。
欧州では働きたくても働けない者を救う役割を古くからキリスト教会が果たしてきたが、「囲い込み運動」により大量の失業者が
発生したことにより、16世紀の英国で初めて政府主導の救貧行政が実施された。英国ではその後も制度の拡充が図られ、革命など社会の
混乱が生じなかったことから、欧州の他国も「貧民を救済することによって社会秩序が保たれる」との認識が広まり、こぞって類似の
制度を導入した。
これに対し日本にはこのような歴史を有していない。
(続く)
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