中川淳一郎 2019年12月16日 14:15
日経新聞の「 『年収1400万円は低所得』人材流出、高まるリスク 安いニッポン(下)」という記事が登場し、12月16日の
『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)で、OECD加盟国で日本だけが成長しておらず、サンフランシスコでは1400万円でも
「低所得」扱い、という話をしていました。日本の家庭あたりの所得は500万円、とも説明していました。
厚労省によると給与は男性441万円、女性249万円。外国人が日本のダイソーで爆買いするのは、日本の方が安いからだそうです。
これは嘆くべき話です。しかし、これに対してネットでは反発する人も一部います。それは以下のような論に表れています。
【1】日本で十分に楽しく生活できているんだからいいじゃないか
【2】お前達は家賃60万円、ランチに3000円かかるサンフランシスコに住みたいか?
【3】それでもGDP世界3位だろ
【4】こんなに安全な国はない
【5】税金・医療費も安いし、物価も安くて最高じゃないか
【3】については「お前達は何位になるまでそれを良しとするのだ」という危機感を持つべきだし、OECD加盟国の中ではアメリカ・
メキシコに次ぐ人口3位。一応「先進国」扱いの中で人口が多いんだからGDP3位というのも驚くべき話ではない。問題は「一人当たりの
生産性」についてなのです。
ここではまず【2】から考えるべきです。東京では1人暮らしで満足できる家だと家賃12万円、ランチが800円〜1000円でしょう。
地方では家賃6万円〜8万円、ランチは700〜900円とでもしましょうか。「家賃60万円、ランチ3000円のサンフランシスコなんて
最悪だろ?」という発想ですが、それは「下から上を見ている」ことに他なりません。サンフランシスコの人間が、東京事務所に
駐在して、サンフランシスコと同様の賃金を貰えるとしたら、松濤のマンションやら高級タワマンを借りる「上級国民」になるわけです。
普段、日本人のあまりカネ持っていない人々としか付き合っていないから、【2】のような発想になるんですよ。「彼らはこちらに余裕で
来られるけど、オレらはサンフランシスコに行けない。それは悔しい」という発想になった方がいいんですよ。最低でも彼らは「世界の
どこでも生きられる」という選択肢を持っている。
国の強さを表すのは通貨の価値ですが、私は1996年、1ドル=79円の時、アメリカ旅行をしました。いやはや、円の強さ、感じましたよ。
だって学生街でまともな外食をしたら4ドルとか5ドルなわけで、すると320円〜400円で腹いっぱいになるんですから。吉野家の牛丼が
400円の時代ですから、アメリカの方が満足度は高かったです。ホテルに泊まろうにも60ドルのまともな部屋だったら4800円です。
こうした経験を経た上で2016年にイタリアに行ったら、ビール2本とパスタで4000円!ランチが4000円ですよ! しかし、周囲の
イタリア人を含めた白人や中国人は平然とこれらを食べている。円の力が落ちたことと、日本国内の給与水準の低さを痛感し、
「もうヨーロッパには来ない。惨めな気持ちになるだけ」と感じてしまいました。
(続く)
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