「お姉さん、なんでタクシードライバーになったの?」 
   高山さん(仮名・30代)にとって、乗客からこんな言葉をかけられるのは日々のルーティン化した。時代錯誤とも取られそうな発言だが、「ほぼ100%聞かれるので、もう慣れました」と高山さんは苦笑いを浮かべる。   
 ドライバーになって10年。現在は都内のタクシー会社に勤務している。当時と比べて、業界に入ってくる女性の数はずいぶん増えたという。   
 実際、全国ハイヤー・タクシー連合会の調査によると、2020年3月末時点の女性乗務員数は1万0108人で、10年前より3割増えた。乗務員全体に占める女性比率も、2020年3月末で3.6%と10年前の2.3%から上昇した。   
 ただ世間には「タクシー=男性の仕事」という概念が根深く残る。少しずつ変化は生まれつつあるが、乗客の認識は以前のままだ。そのギャップに苦しむ女性ドライバーは少なくない。   
 ◇何不自由なく育った学生時代   
 「地方ならまだしも、これだけ仕事が選べる東京で、若めの女性ドライバーは珍しいんでしょうね。物珍しさからか、お客さんは私のことを根掘り葉掘り聞いてくるんですよ(笑)。   
 これまでしてきた仕事の中でも、タクシーは一番居心地がいいんです。それは間違いない。向き不向きはあると思いますが、女性が活躍できるフィールドは十分にあると思います」   
 東京都立川市で生まれ育った高山さんは、いわゆる「お嬢様」として幼少期を過ごした。中学、高校と有名私立に進み、両親からの愛情を受けて何不自由なく育った。だが、きらびやか同級生たちに無理やり合わせる学校生活にストレスがたまっていった。   
 いじめにあったり、学力的な問題を抱えていたりしたわけではない。ただ、周囲からは「協調性がない」との烙印を押されたという。そんな学校生活になじむことができず、高校では不登校の寸前までいった。   
 「私立にまで行かせてもらったのに、何をやっていたのかなと思います。ただ、本当にみんなに合わせて生活する必要があるのか?とすごく感じていたんです。自分のリズムで生活するのがそんなにいけないの?と。   
 次第に学校に行くのが煩わしくなり、勉強もやめました。大学に進学しても同じような状況でしょうし、早く社会に出ようと考えたんです」   
 社会人になっても自身の本質的な性格は変わらなかった。高校を卒業後、地元のパチンコ店やアルバイトを転々とし、両親からは「定職に就け」と諭される日々だった。    
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