内閣府が17日に発表した昨年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報は、実質経済成長率が前期比年率で6・3%減と急激な
落ち込みをみせた。日本経済新聞は消費税増税の予定通りの実行を安倍晋三政権に催促してきたことを忘却したかのように、18日朝刊社説で
「日本経済は予断を許さぬ局面を迎えた」とうろたえた。何をいまさら、と苦笑させられる。
消費税増税がアベノミクスを殺すとして、国内メディアではただ1人、一貫して反対の論陣を張ってきた拙論だからこそ歯に衣着せず
言わせてもらおう。今の安倍政権からは景気に対する危機感が伝わってこない。「安倍首相殿、消費税増税による失政を素直に認め、ただちに
適切な是正策を打ち出すべきではありませんか。消費税率10%は家計を直撃し、しかもそれは台風や新型コロナウイルスのような一過性の
災厄ではなく、今後も持続するのですよ」と。
17日の衆院予算委員会ではGDP速報を受けて、元民主党の無所蔵、馬淵澄夫議員が安倍首相や西村康稔経済再生担当相に見解をただした。
安倍首相は家計消費の落ち込みについて、個人消費の一定程度の反動減はあるが、前回(14年4月)の消費税増税直後よりも落ち込み幅は
少ないことや、暖冬や台風による影響が大きい点を強調した。「今後、経済対策の効果が発生していくことを踏まえれば、わが国、経済は
基調としては今後とも内需主導の緩やかな回復が継続していくものと考えております」と楽観調だ。「消費税増税不況」は認めない姿勢で
一貫している。
グラフは18年1〜3月期から19年10〜12月期までの実質GDPと家計消費(持ち家のみなし家賃を差し引いた正味ベース)の
前期比年率値の推移である。首相や西村再生相が繰り返し強調したように、家計消費は14%減で前回の22%減よりもましだが、2ケタの
マイナスになる。しかも民間企業設備投資は14%減で、前回の7・4%減よりもはるかに大きな落ち込みぶりだ。
1〜3月期は中国発の新型コロナウイルスにより、家計や外国人旅行客の消費や、中国を中心とするサプライチェーンの寸断による生産面への
衝撃が加わる。
新型ウイルスによる消費減は一時的であり、終息宣言が出ると一転して消費は急速に回復する。2002年11月から03年7月にかけて
中国広東省発で香港など世界に広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)の場合、香港では個人消費がV字型回復を遂げた。
今の日本の場合、新型ウイルスの脅威が去ろうとも、消費税増税という政策が引き起こす宿痾(しゅくあ)はそのままだ。デフレの重圧の
ために家計消費から設備投資まで停滞が長引く。経済はゼロ成長、そして慢性デフレ、予算国会は「桜を見る会」ばかりにうつつをぬかす場合か。
(産経新聞特別記者・田村秀男)
https://www.sankei.com/premium/news/200222/prm2002220...
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