というのも、12日に決定した2020年度の与党税制改正大綱では目玉のひとつとして「オープンイノベーション促進税制」の創設を掲げたが、
これは大企業が設立10年未満などの条件を満たしたベンチャー企業に1億円以上を出資した場合、出資額の25%を減税するという。さらに、
次世代通信規格である5Gを整備する企業などにも投資額の15%を税制控除するというのだ。
こうした措置を「内部留保を投資に回させるため」だの「中国や韓国に出遅れている5Gを国家戦略に」などと言うが、内部留保を溜め込む
大企業も、やはり大企業である携帯大手も現時点で十分優遇されている。現に、ソフトバンクグループが2018年3月期の決算で連結純利益
(国際会計基準)を1兆389億円も計上しながら、税務上の欠損金計上という合法的な“租税回避”をおこない、法人税がゼロ円だったことが発覚、
ネット上でも話題となったが、日本ではこのほかにも研究開発減税などの租税特別措置によって多くの大企業が法人税を優遇されている。なのに、
こうした大企業をさらに優遇しようというのである。
本サイトでも繰り返し指摘してきたが、消費税の税率を上げつづける一方、安倍首相はアベノミクスの成長戦略として法人税率をどんどん
引き下げてきた。大企業が税の優遇を受け、2018年度の内部留保は463兆1308億円と安倍政権下で過去最高を更新しつづけている反面、
その穴埋めをお年寄りや子どもにまで課せられる消費税で強いる。これが安倍首相のやってきたことだ。
そうして、安倍政権がどんどん大企業だけを優遇し、国民に負担を強いているうちに、日本の国民の生活レベルは、先進国から完全に
取り残されてしまった。
今月12日に日本経済新聞電子版は“アメリカの住宅都市開発省の調査が、サンフランシスコで年収1400万円の4人家族を「低所得者」に
分類した”と衝撃的なニュースを伝えた。日本では年収850万円超でマスコミは「高所得者」と表現し、年収200〜300万円以下が「低所得者」と
呼ばれるが、それがサンフランシスコでは1400万円でも低所得者になる……。頭がクラクラとしてくる話だが、記事によると日本人の給料は諸外国と
比べても安く、たとえば「システム開発マネージャーの年収」だけを見ても、2007年を100として2017年を指数化して比較したところ、タイが
210、インドが183、中国が176、アメリカでも119であるのに対し、日本は99で微減しているというのだ。
だが、これはIT業界にかぎった問題ではない。きょう放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)でもこの日経記事をもとにして特集を
組んだのだが、そこでは安倍首相が絶対に語らない、重要な指摘がなされたのだ。そう。実質賃金の問題だ。
番組では経済協力開発機構(OECD)加盟国の実質賃金の推移を紹介したのだが、1997年を100とした場合の2016年の指数では、上位から
スウェーデンが138.4、オーストラリアが131.8、フランスが126.4である一方、日本は89.7。経済が成長するどころか衰退し、実質賃金は
1997年よりマイナスに転じているのである。
(続く)
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