竹中平蔵 経済学者/東洋大学国際学部教授 
   この本を書いた高橋洋一氏は、かつて私が小泉内閣時代に郵政民営化に取り組んだとき補佐役として助けてくれた仲間であり、東大の数学科を 
 出て大蔵省に入った異才です。   
 彼いわく、文系の人は数字に苦手意識があるけれども、実は数字って細かい部分を見る必要は一切ない。大きな数字の枠組みを組み合わせるだけで、 
 物事をクリティカルに考えることができるんです。   
 「大きな枠組みで考える」ということを具体的に説明しましょう。日本はGDPの2倍ぐらいの債務を持っている財政赤字の国だと言うけれども、 
 実はGDPの1.5倍ぐらいの資産を持っているんですよね。そうすると日本の負の資産というのは言われているほど大きくはないんです。   
 だから、高橋氏も私も消費税の拙速な引き上げにはずっと反対しています。そんなことより売れる資産がたくさんあるから売れと。考えてみれば、 
 政府はその資産を使って特殊法人をつくって、そこにたくさん天下らせているじゃないか。そういったことを全部見抜くために、大きな数字 
 というのが役に立つということなんです。   
 もちろん、それをもっと細かく分析する方法も“正しい「未来予測」のための武器になる数学アタマのつくり方”には書かれていますが、私は 
 全体として流れている大きな数字を理解する頭を持てばよいと思います。   
 数字と聞くと、おそらく多くの人は、「何だか細かいもの」と思うから嫌がるんですよ。本当は細かい数字なんか全然必要なくて、大きな枠組みで 
 考えて、私たちの世の中がどんなふうな仕組みで回っているのかを考えればいい。   
 企業に置き換えると、自分の会社は大体何億円ぐらい収入があって、何億円の利益が出ているのか。これはほかの会社に比べて何%高いか、低いか。 
 それくらいで考えればいいということですよね。   
 本書の中では次のような言葉で書いてあります。   
 “負債を持つことには何の問題もないかというとそれは違う。ならば、資産が多ければ問題がないかというとそれも違う。重要なのは「負債と 
 資産のバランス」である。”   
 “そして、これもあたりまえの話なのだが、「資産」から「負債」を引くと「純資産」となる。「資産」の大きさや「負債」の大きさが問題 
 ではなく、「純資産」の大きさ=「純資産がプラスかマイナスか」が問題なのである”   
 (続く)
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