参院選はアベノミクスの成果を判断する機会だ。安倍政権が強調する「六年間の実績」をどう評価するのか。有権者は選挙後の
消費税増税を意識しつつ、暮らしを守るための選択を迫られている。
日銀が地域ごとに景気を分析した七月のさくらリポートは、「拡大」か「回復」という表現を全国で引き続き使った。政府も
月例経済報告で依然「緩やかに回復」との判断を維持している。
だが五月の毎月勤労統計では一人当たりの現金給与総額が五カ月連続のマイナス。街角の景気実感を示す景気ウオッチャー調査
(六月)も二カ月連続の悪化だった。さらに二〇一八年の国民生活基礎調査によると、一世帯あたりの平均所得額が四年ぶりに
前年割れとなり、「生活が苦しい」と答えた世帯も約57%と高水準である。
つまり政府や日銀がいくら回復基調を唱え株価や為替が安定していても、暮らしの現実は確実に厳しくなっている。
安倍政権が掲げたアベノミクスは、大規模な金融緩和と積極的な財政政策、成長戦略を束ねて実施する点が特徴だ。政権は成果
としてまず雇用の改善を強調する。
確かに完全失業率は2%台半ばで安定し、有効求人倍率も全地域で一倍を超えるなど数字上の成果は出た。
しかし、雇用改善の流れは〇八年に起きたリーマン・ショックの後から始まっており、成果とは断定し難い。少子高齢化を背景に
生産年齢人口は減っており、むしろこれが失業、求人の数字上の改善の説明としては説得力があるのではないか。
アベノミクスで最も期待されたのは成長戦略だった。新しい経済のけん引力の提案を国民は待った。だが外国人観光客が大幅に
増えたほかは目立った政策効果は出ていない。
一方、デフレ脱却を目指して続く金融緩和は地方銀行の経営悪化という副作用ばかりが目立ち、肝心の物価上昇率2%は未達成だ。
同時に緩和策が、年金生活者ら多くの人たちから金利を奪い続けている現実も忘れてはならない。
選挙後、政府は消費税率10%へのアップを予定する。増税後には個人消費は減少し経営者の心理は冷えるだろう。それは雇用問題へと
波及する懸念さえある。有権者は、暮らしを守る政策をどの政党や候補者が掲げているのか、これまで以上に丹念に吟味して投票せねば
ならない。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK201...
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