日本は豊かな国であると信じられてきました。
ところが、豊かさを単純に所得水準で測るとどうなるか。こちらの尺度を使うと、日本は必ずしも豊かとはいえないのです。
国民1人当たりの総所得の世界ランキングにおける日本の順位は、この30年間で大きく変動しました。OECD(経済協力開発機構)加盟の
35カ国での順位は、2017年の段階で日本は22位。トップのスイスと比べると、1人当たりの国民所得は半分以下です。過去、日本はこの
ランキングにおいて1986年から97年までの12年間は3位か4位を保持し、世界のトップ層でした。米国と比べても、97年までは日本の
ほうが上位でした。ところが現在、米国との差は逆転し、1人当たりの国民所得は米国の6割強にまで下がっています。
1人当たりGDP(国内総生産)ランキングをみても、日本は世界26位で、イスラエル(23位)やUAE(25位)にも負け、韓国(28位)とは
わずかな差しかありません。最近何かと日本を刺激している韓国ですが、下手をすると、あと数年後には韓国に並ばれ、さらに順位が落ちる
可能性もあるのです。
これはけっして数字上のマジックではありません。
たとえば、東京都内を歩く外国人観光客は、年々リッチになっています。いまや大陸の中国人でも、日本人より金回りのよさそうな人が
増えました。ニセコのホテルでは、1泊10万円ぐらいのホテルも外国人観光客でいっぱいです。
逆に日本から海外に行くと、どこもかしこも物価が高く、驚きます。ロンドンでは1泊5万円ぐらいのホテルがざらにあります。
実際に外国人と日本人の購買力の差が広がっていて、日本のほうが物価が安いのです。
バブル崩壊後の「失われた30年」で、日本経済の凋落はここまで来たかと、あらためて思い知らされるのです。
日本の物価が安くなったのは、2013年から始まった「異次元緩和」で円安になったせいもあります。
しかし、この7年間で進んだ円安だけでは説明できないほど、日本の物価下落は急激に進行しています。
ではなぜ、日本は「安い国」になってしまったのか?
じつは日本の経済的地位の低下は、生産性の低下によって生じたものです。名目GDPを労働力人口(就業者+失業者)で割った「1人当たり
生産性」が長い間、低い水準であったため、いまや主要先進国だけでなく、オーストラリア、アイルランド、イスラエルにも抜かれて
しまったのです。
(続く)
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